不登校の類型シリーズということで、前回、不登校の5類型をご紹介しました。
これは繰り返しになりますが、私がこれまで不登校やいじめといった教育の現場で関わってきた事例をもとに整理したものです。
学者さんが作ったものでも、お医者さんが作ったものでも、児童相談所が作ったものでもありません。完全に私自身が現場での経験を積み重ねる中で作った、オリジナルの分類です。
もちろん学術的な理論ではありませんし、絶対に正しいものだと言うつもりもありません。しかし、実際に子どもたちや保護者の方々と向き合う中で、「今、この子に何が起きているのか」「どのような対応が必要なのか」を考えるための道具としては、一定の役割を果たしてきたと感じています。
今回からは、この5つの類型について順番に具体的な事例を交えながらお話ししていきたいと思います。
今回は第2回ということで、最初の類型である「自己防衛型」についてお話ししていきます。続きをどうぞ。
1. 自己防衛型とは何か
自己防衛型の不登校というのは、むしろ私たちの方から「学校に行かないでください」とお勧めするタイプの不登校です。
これは、いじめや教師による体罰など、子どもに対する加害行為が学校の中で行われているケースを指します。
子どもが学校に行きたくないと言っているのではなく、子どもを守るために学校から離れる必要がある状態です。
逆に言うと、この類型は「不登校にならないとまずい」タイプでもあります。
そのまま学校に通い続けることで、より重大な事件や深刻な心身のダメージにつながる可能性があるからです。
実際、私がこれまで関わってきた不登校やいじめの事例の中でも、この自己防衛型はかなり多かったという印象があります。むしろ、一番多かったのではないかと思うくらいです。
今回は、私が家庭教師時代に実際に関わった生徒さんの事例をもとにお話ししていきます。
まず一つ目は、私自身がまだあまり経験を積んでいなかった頃の事例です。この経験が、後に「自己防衛型」という類型を考えるきっかけになりました。
そして二つ目は、その後ある程度経験を積んだ段階での事例です。自己防衛型として学校から距離を置くという選択を取ったことで、結果的にいじめ問題の解決につながっていったケースです。
まずは、一つ目の事例からお話ししたいと思います。
2. ケーススタディ① 中学1年生女子の学校復帰
この生徒さんは、私が家庭教師として独立し、プロとして仕事を始めて3年目くらいの頃に担当した生徒さんでした。
もともとはお兄さんを家庭教師として指導しており、その関係で、
「うちの子が学校でいじめを受けているみたいなんですよね」
という相談を受けたことが、このケースの始まりでした。
そのご家庭とは、お兄さんの指導を通じて長い付き合いがあり、プライベートでも親しくさせていただいていました。そのため、夕食をご一緒しながらお話を聞くような形で、かなり率直なお話を伺うことができました。
お話を聞いてみると、原因は女子生徒同士のグループ内トラブルでした。
陰口を言われる。
無視をされる。
そういったことが続いていたようです。
本人にとってはかなり傷つく言葉もあったようで、「もう学校がつらい」という状態になっていました。
ただ、当時の私はまだ経験も浅く、今のように明確に「学校に行かなくていいですよ」と言えるほどの確信は持てていませんでした。
そんな中で、お父さんとお母さんが、
「そんなに嫌なら行かなくていい」
とはっきり言ってくださったのです。
そして、
「その間の学習については小林先生にお願いします」
という話になり、不登校期間中の学習支援を私が担当することになりました。
そういう意味では、私のキャリアの比較的早い段階で、このような事例に出会えたことは非常に幸運だったと思っています。
こうして、この生徒さんは不登校になりました。
期間としては、夏休みを挟んでおよそ3〜4か月ほどだったと思います。
私の方では、まず目標を設定しました。
「学校には行かなくてもいい。でもテストだけは受けよう」
という目標です。
保健室でも相談室でも構わないから、テストだけは受けようと約束しました。
そして通常よりもかなり早い段階からテスト対策を始めました。
多くの中学生はテストの1〜2週間前から勉強モードに入りますが、この生徒さんの場合は1か月以上前から準備を進めていきました。
本人はかなり傷ついていましたが、もともとの性格は負けず嫌いなところがありました。
ですから、
「テストであの子たちを見返してやる」
という言葉も出てきました。
そうした気持ちを目標につなげながら指導を進めていきました。
そして最初のテストを受けたとき、本人の中で手応えがありました。
続く次のテストでも目標としていた結果を出すことができました。
その結果、
「よし、学校に行ってみよう」
という気持ちになり、学校へ復帰することができたのです。
この不登校期間中には、学校側との対話を進める時間も十分にありました。
保護者の方々が学校と話し合いを重ね、今後同じようなことが起こらないよう対応を進めてくださっていました。
ここで特筆したいのは、ご家庭の支え方です。
これは次の「疲労困憊型」の話でも詳しく触れたいと思いますが、この生徒さんのお母さんは、娘さんを家の中に閉じこもらせないように本当に気を配っておられました。
買い物に連れ出したり、気分転換に一緒に出かけたりする。
地元のスーパーでは人目が気になるだろうと考え、少し離れた場所まで買い物に行くこともあったそうです。
お母さんと娘さんが友達同士のように一緒に時間を過ごしながら、傷を癒していったのです。
そして学校との対応についても、お父さん、お母さんがしっかり話を進めてくださり、今後のいじめがないことを確認した上で学校に復帰することができました。
その後も私は卒業までこの生徒さんを担当しましたが、大きなトラブルはありませんでした。
もちろん小さな人間関係の問題はあったかもしれませんが、この時のいじめ問題については乗り越えることができたのだと思います。

3. ケーススタディ② 小学1年生のいじめ対応
二つ目の事例は、ここ数年の間にご相談いただいたケースです。
東京の方から、インターネットで私のことを見つけていただき、ご相談いただきました。
期間としては1か月ほど、その後の経過確認も含めると1〜2か月ほどやり取りをさせていただいたケースになります。
このケースは、小学校1年生のお子さんでした。
違うクラスの生徒から、登下校の際に暴力を受けたり、持っていた給食袋を引きちぎられたりするなどの加害行為があったそうです。
その結果、お子さんが非常に怯えてしまい、どうしたらいいのか分からないという状態になっていました。
お父さんも非常につらい思いをされており、その中で私にご連絡をいただいたというケースです。
このときには、私自身もいくつかの経験を積んでいましたので、まず最初に、
「学校を休ませてください」
ということをお伝えしました。
そして、
「まずはお子さんが傷ついているので、家の中でしっかり回復できるようにしてください」
ということ。
さらに、
「学校とのやり取りについては、その都度ご報告ください」
という形でお話を進めました。
まず学校側の対応としては、
「学校は休まないでください」
「学校に来てくれれば学校で対応できます」
というものでした。
学校の先生の立場としては、当然そういう話になるのだと思います。
しかし保護者の立場からすれば、安全が確保されていない場所に子どもを送り出すわけにはいきません。
そのため、お父さんには、
「安全が確保されるまでは学校には行かせません」
という姿勢を貫いていただきました。
教育基本法には、教育の第一義的責任は保護者にあるということが明記されています。
ですから、まず保護者としてお子さんの安全を確保していただくことが重要です。
私がまず休ませてくださいとお伝えした理由は、もう一つあります。
学校に通わせながら対応を進めると、子ども本人に対して学校側が様々な働きかけを行うことがあります。
もちろん善意で行われることもありますが、場合によっては、
「○○くんにも悪いところがあったよね」
というような形で、被害者側に納得を求める方向へ話が進んでしまうことがあります。
そうしたことを防ぐ意味でも、まずは学校から距離を置いていただきました。
結果として、このケースでは約2週間学校を休んでいただきました。
その間に、副校長先生を中心として、いじめ対策のチームが立ち上がりました。
副校長先生がお父さんと直接話し合いを行い、解決へ向けた対応が進められました。
加害生徒に対する指導も行われたようです。
私は直接学校とやり取りをしたわけではありませんので、お父さんから伺った範囲でのお話になりますが、保護者への指導や本人への注意に加え、問題が起こりそうな場面では先生を追加で配置するなど、具体的な再発防止策も取っていただいたとのことでした。
その結果、2週間ほど経った頃には、お子さん自身も前向きになり、
「学校に行ってみようかな」
という気持ちになってくれたそうです。
そして学校へ復帰することができました。
相談をいただいてから学校復帰まではおおむね1か月程度、その後の経過確認も含めると1〜2か月ほどのやり取りでした。
非常に迅速に解決へ向かったケースだったと思います。
これは学校の対応が非常に適切だったことも大きかったと思います。

4. 自己防衛型で最も大切なこと
どの学校にも、いじめ防止対策推進法に基づくガイドラインがあります。
その中では、いじめの事案を認知した場合、校長を中心とした対応チームを立ち上げることになっています。
これは法律上も求められている対応です。
しかし実際には、
「まだいじめと確定していない」
「もう少し様子を見ましょう」
という形で、チームが立ち上がらないケースも少なくありません。
本来は、いじめの相談があった時点で立ち上がるべき組織です。
このケースでは、学校に行かせないという判断をしたことで、学校側の対応を引き出すきっかけにもなりました。
そういう意味でも、この自己防衛型においては、学校に行かせないという判断が重要になることがあります。
5.いじめのときは、まず学校から離れる
私は、いじめを受けているにもかかわらず学校へ送り出し続けることは、できるだけ避けていただきたいと思っています。
もちろん、
「学校に行かなくて大丈夫なのだろうか」
と心配になるのは自然なことです。
それも保護者としての愛情だと思います。
しかし、いじめの最悪のケースは命に関わる事態です。
その可能性があるということを忘れないでいただきたいと思います。
また、学校へ行かない期間には、お子さんがエネルギーを取り戻したり、自信を回復したりすることもあります。
お父さんやお母さんの愛情を改めて感じることで、大きく成長するお子さんもいます。
私はそうした姿を何度も見てきました。
ですから、いじめや体罰など、子どもに対する加害行為が起きている場合には、まず安全確保を優先する。
それが自己防衛型において最も大切な考え方だと思っています。


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