今日は、アイアルクのゲーム部の生徒さんの話をしようと思います。
個人名は出せないので、ここでは仮にAくんと呼ばせてもらいます。
Aくんは、もともとゲームが好きな子でした。小学生のころからScratchで自分のゲームを作って、それを私たちに見せてくれることもありました。
最初からゲーム部にいたわけではなくて、もともとはロボ部で活動していました。ロボ部の活動も続けながら、自分では家でいろいろ作っていたんだと思います。休憩時間などに、自分で作ったものを見せてくれることもありました。
その後、ロボットの方もある程度やり尽くした感じが出てきたので、「そろそろゲーム部に行ってもいいんじゃないの」「ゲーム部だともっといろんなことができるよ」と話していたところ、ゲーム部に移ってきました。
ゲーム部に来てからは、もう1年くらいになると思います。
ゲーム部の学習内容
アイアルクのゲーム部では、基本的にPythonを使ってゲーム制作をしています。
なぜPythonを使うのかというと、今、小学生が取り組むプログラミング言語として、かなり一般的になってきているからです。
これからの子どもたちが「プログラミングをやっています」と言ったときに、「Pythonは触ったことがありますか」と聞かれる場面は、かなり増えていくと思っています。
なので、アイアルクでは、本格的なプログラミング言語に入るときの最初の言語として、Pythonを扱うようにしています。
ゲーム部では、最初は廣瀬豪さんのゲームプログラミングの教材などを使いながら進めています。私も廣瀬豪さんの本は何冊も持っていて、その中から、子どもたちに合いそうなものを選んで渡しています。

もちろん、最初から全部自由に作るというのは難しいです。
まずはテキストに沿って、キャラクターを動かすとか、当たり判定を作るとか、点数を表示するとか、そういう基本的なことを学んでいきます。
ただ、テキストはあくまで入口です。
ある程度できるようになってくると、「こういうゲームを作りたい」「こういう動きをさせたい」という気持ちが出てきます。そこから先は、本人のやる気や意欲に応じて、オリジナルのゲーム制作に進んでいくこともあります。
テキストの先へ
Aくんも、最初の方はテキストを進めていました。
でも、途中から自分でChatGPTに聞きながら、いろいろ作るようになっていきました。
これが、見ていてかなりおもしろいところでした。
私が「これをやりなさい」と言ったわけではありません。
Aくん自身が、「こういうものを作りたい」と思って、そのためにはどうしたらいいのかをChatGPTに聞きながら、自分で調べて、自分で試していたんです。
3Dゲームへの挑戦
たとえば、あるときAくんは、Pythonで3Dゲームを作りたいと思ったようでした。
普通に考えると、Pythonでゲーム制作というと、まずは2Dのゲームを作ることが多いです。私たちも、基本的にはそのつもりで教材を組んでいます。
ところがAくんは、そこから一歩進んで、Pythonで3Dゲームを作る方法を自分で探し始めました。
そして、ChatGPTに聞きながら、UrsinaというPythonで3Dゲームを作るためのゲームエンジンを見つけてきました。
正直に言うと、私はそのときUrsinaを知りませんでした。
なので、Aくんがそれを使って何か作ろうとしているのを見て、「おお、すごいな」と思いました。
先生が知っていることを、生徒に教えるだけではない時代がきたんだなと感じました。
生徒が自分でChatGPTに聞いて、先生が知らない技術を見つけてきて、それを自分で試してみる。先生はそれを横で見ながら、一緒に考える。
そういう学び方が、もう現実に起きているんです。
これは、ChatGPTを使った教育の可能性をすごく感じた出来事でした。
現在作っているもの
今は、AくんはいったんUrsinaからは離れて、マリオのような横スクロールアクションゲームを作っています。
まだ見た目としては、キャラクターは四角です。
でも、その四角がジャンプしたり、落ちたり、足場に乗ったりするような動きを作っています。
ゲーム制作では、最初から見た目をきれいにする必要はありません。むしろ、最初は四角でいいんです。
大事なのは、動きの仕組みを作ることです。
ジャンプしたら上に動く。重力で下に落ちる。床に当たったら止まる。横に移動する。そういう一つひとつの仕組みができて、はじめてゲームらしくなっていきます。
Aくんは、そこを自分で作っています。
ChatGPTとの関わり方
もちろん、ChatGPTの力も借りています。
ただ、ここで大事なのは、ChatGPTに丸投げしているわけではないということです。
Aくんには、長年アイアルクで培ってきたChatGPTが出してきたPythonのコードを読む力があります。AIが出してきたがあったとしても、それが何をしているのかコードを読んで理解して自分のプログラムに取り入れています。
場合によっては、ChatGPTに何度も説明したり修正をお願いしたりするより、自分で打った方が早いという段階にもなっています。
ここが大事だと思っています。
AIを使うことと、AIに使われることは違います。
AIが出してきたものを何も考えずに貼り付けるだけなら、それはあまり力になりません。
でも、自分の作りたいものがあって、そのためにAIに聞く。出てきたものを読み、自分で判断し、自分の手で直していく。
そういう使い方ができると、AIはかなり強力な学びの道具になります。
Aくんの姿を見ていると、まさにそれを感じます。AI時代に必要な力をAくんは教えてくれています。
子どもの興味の広がり
私は、子どもたちのやる気や創造性に驚かされることがよくあります。
大人が「このくらいかな」と思っている範囲を、子どもたちは勝手に超えていくことがあります。
もちろん、アイアルクの中では、こちらで筋道は用意しています。
「まずはこういう順番でやるといいよ」
「ここまではできるようになろう」
「次はこういうことに挑戦してみよう」
そういう基本の流れは作っています。
ただ、その筋道から外れて、「自分はこれをやってみたい」と言う子が出てくることがあります。今回ご紹介したAくんのように。
そのときに、私はできるだけ止めないようにしたいと思っています。
もちろん、何でもかんでも好き勝手にやればいいということではありません。基礎が足りなければ、うまくいかないこともあります。難しすぎて、途中で止まってしまうこともあります。
それでも、その子がそこに行きたいと思ったということには意味があります。
なぜなら、その子がやりたいとおもったことは、将来、別の子もやりたいと思う場所かもしれないからです。
私は、そういう子を「最初の一人」だと思っています。
AくんがPythonで3Dゲームを作りたいと思ったことも、もしかしたら今後、別の子が同じようにやりたいと言うかもしれません。
AくんがChatGPTを使って新しい技術を見つけてきたことも、これからのゲーム部の学び方を広げるきっかけになるかもしれません。
そう考えると、Aくんの挑戦は、Aくん一人だけのものではないんです。
教室全体の学びを、少し先に進めてくれている出来事でもあります。
本流と寄り道
寄り道も、無駄ではありません。
3Dゲームに挑戦してみて、いったんそこから離れる。
それでいいと思います。
また本流に戻ってきてもいいですし、別の方向に進んでもいい。寄り道した時間の中で見たもの、触ったもの、考えたことは、その後の学びに必ず残ります。
ロボ部やゲーム部は、決められた課題をただこなす場所ではありません。
もちろん、基本のカリキュラムはあります。テキストもあります。こちらで用意した道筋もあります。
でも、その先に、子ども自身の「作りたい」が出てきたときには、それをできるだけ大事にしたいと思っています。

アイアルクで大切にしていること
先生が全部を知っていて、子どもに一方的に教える。
そういう形だけでは、これからのプログラミング教育はたぶん足りません。
子どもが自分で調べる。AIに聞く。試す。失敗する。直す。先生も知らなかったものが出てきたら、先生も一緒に学ぶ。
そういう形が、これからはもっと増えていくと思います。
Aくんの姿は、その一つの例です。
アイアルクのゲーム部では、これからも基本を大切にしながら、子どもたちの興味や創造性が広がっていくような場所を作っていきたいと思っています。

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