はじめに
前回は子ども向けIT教育の難しさについてお話ししました。
今回は、その続きとして、「変化についていくことの難しさ」について考えてみたいと思います。
IT教育の指導者が向き合わなければならない変化は、大きく二つあるんですよね。
一つは、技術発展による変化です。
もう一つは、子どもの成長による変化です。
IT教育では、この二つの変化に同時に向き合わなければなりません。今回はまず、その前半として、技術発展についていく難しさを中心にお話しします。

IT教育は、教える内容そのものが変わっていく!
まず、IT教育においては、「何を教えるのか」という問題があります。
一口にIT教育といっても、その中身はさまざまです。
プログラミングを教える場合もあれば、電子工作を扱う場合もあります。ExcelやWordの使い方を教えるパソコン教室もありますし、ゲーム制作を中心にしたプログラミング教室もあります。
また、マインクラフトのような子どもに人気のあるコンテンツを使って、教育活動を行っているところもあります。
しかし、ここで難しいのは、それぞれの教える内容や、指導に使うツールが、どんどん新しい技術に差し替わっていくということです。
昨日まで主流だった教材やツールでも、数年後には確実に古くなっています。新しい技術やサービスが出てくれば、それをどう扱うのか、教育の中に取り入れるべきなのかを考えなければなりません。文科省もメーカーさんも新しい技術が教育現場でどう使われるべきか、なんてことを考えてはくれないので自分で考える必要があるわけです。
これは言ってみれば、地面が常に動いている中で、自分の立ち位置を決めなければならないような難しさがあるわけなんです。
AI技術の進歩が、変化を一気に加速させた
その中でも、特に顕著な変化が起きているのが、昨今のAI技術の進歩です。
私の感覚では、2023年ごろから画像生成AIがかなり実用的に使えるようになってきたところから、一般にも大きく注目されるようになったと思います。
その後、ChatGPTをはじめとする生成AIが広がり、文章、画像、プログラムなど、さまざまなコンテンツをAIが作れるようになってきました。
さらに大きいのは、その指示の出し方です。
従来のプログラミングのように、特殊な言語や決まった文法を覚えなければならないわけではありません。人間がふだん話しているような自然な言葉で、「こういうものを作ってほしい」「こういうことを知りたい」と伝えることができるようになってきました。
これは、子どもとコンピューターの親和性を飛躍的に引き上げ、教育上の大きな可能性となる力を持っているといえます。
一方で、その変化はあまりにも速いものでもあります。
AIを道具としてどう使うのか。
あるいは、AIそのものの使い方を、カリキュラムの中にどう組み込んでいくのか。
そうしたことを考えなければならない状況になっています。
しかし現実には、技術の変化が速すぎて、教育の側がまだ十分に追いついていないという状況がすでに生じています。
以前のAI教育利用と、現在のAI教育利用は大きく違う
私がITスクール・アイアルクの校長に就任する前、AIのデータ制作の現場に携わっていた時期がありました。
そのころにも、AIの教育利用というものは、少しずつ芽が出始めていました。
具体名については守秘義務があるので出せませんが、ある教育企業さんが、私の勤めていた教育企業と組んで、新しい教育サービスを作っていこうという動きもありました。
ただ、そのころはまだChatGPTもありませんでしたし、画像生成AIも今のようには使えない時代でした。
当時のAI活用は、たとえば成績を分析する、その分析結果に応じて、今ある教材の中からどれをおすすめするかを考える、といった使い方が中心で、既存の教材や学習データをもとに、より適切な学習を提案するという形が主だったわけです。
それが今は、まったく違う段階に入っています。
今のAIは、子どもたちの悩みを直接聞くことができます。
「こういうところを練習したいから、練習問題を作って」と言えば、プログラミングの練習問題でも、漢字の練習問題でも、算数の練習問題でも、理科や社会の問題でも、すぐに作ることができます。
わからなかったことをすぐにAIに聞いて調べることができる。
もちろん、AIのいうことを無批判に受け入れていいわけじゃないですが、場合によっては学校の先生に一斉授業で教わるよりも、あるいは既存の紙の教材を進めるよりも、自分に合った練習を効率よくできる場面がすでに出てきてるんですね。
ここ数年で、AIの教育利用は、そのくらい大きく変わってきているのです。
民間企業であっても、AIの変化についていくのは簡単ではない
一般的に、民間企業は変化への対応が早いと言われます。
しかし、その民間企業であっても、今のAI技術の変化についていくには、体力もフットワークも足りていないという状況があるように思います。
その理由の一つは、AI技術の根底にある技術者側のスキルセットと、教育業界側が持っているスキルセットが、大きくミスマッチしていることです。
AIが今どの方向に向かっているのか。
これがスキルセットのミスマッチから教育業界側から見えにくくなっている。
もし方向性が見えていれば、今すぐ全部についていけなかったとしても、「こちらの方向に勉強していけばいい」という判断ができます。そうすれば、途中を何段か飛ばしながらでも、次の段階に進んでいくことができます。
私自身は、今そのように考えて動いています。
たとえば、すでに動画生成AIも出てきています。
現時点では、実用的な何十分もあるような教育動画を作ることはまだ無理ですが、あと2年もしたら、子どもたちの求めに応じて、解説の流れや効果的な演出を入れ教育的に伝わる形にまとめるような動画生成AIがでてきてもおかしくはありません。
IT教育業界そのものが陳腐化する危機感
アイアルクとしては、わたくし小林が科学技術オタクで、そういう情報を得ることを趣味にしてる、ということもありまして、新しい技術の方向をしっかりキャッチアップしていくだけの体制はあると思っています。
一方で、IT教育そのものについて見ると、既存の教室や教材がどんどん陳腐化していくという、業界全体の問題があります。
これは、座して待っていればよいという話ではないと思います。
ただ、IT教育そのものがどんどん陳腐化してしまえば、私たちアイアルクの価値も、業界全体の価値と一緒に下がってしまうのではないかという危機感があります。
だからこそ、これは一つの教室だけの問題ではなく、業界全体として考えなければならない問題なのではないかと思っています。

もう一つの変化へ
ここまで、技術発展についていく難しさについてお話ししてきました。
IT教育では、教える内容や使うツールそのものが変化し続けます。特にAI技術の進歩によって、その変化は一気に加速しています。
しかし、IT教育で向き合う変化は、技術だけではありません。
もう一つ、忘れてはいけない変化があります。
それは、子どもたち自身も常に変化しているということです。
次回は、この「子どもの成長という変化」について考えていきたいと思います。

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