今日は、IT教育の難しさについて書いてみたいと思います。
最近は、プログラミング教室、IT教育、ICT教育、ロボット教育など、子どもたちにITを教える活動が広がっています。
もちろん、それ自体はとても良いことだと思っています。
子どもたちが早い段階からコンピューターやプログラミング、ロボット、デジタルものづくりに触れることには、大きな意味があります。
ただ一方で、私はこの分野に関わってきた立場として、少し強く感じていることがあります。
それは、子ども向けIT教育は、思われている以上に難しいということです。
そして、その難しさが十分に理解されないまま、「プログラミングを教える」「ITを学ばせる」という活動だけが広がっている面もあるのではないか、ということです。
今日はその難しさについて、学校や塾との違いも踏まえながら、少し整理してみたいと思います。
学校や塾は「教えるもの」が決まっている
まず、学校や塾の教育を考えてみます。
学校には、文部科学省が定めた学習指導要領があります。
つまり、どの学年で何を教えるのか、どのような力を身につけさせるのかが、ある程度決まっています。
塾の場合も、もちろん教室ごとの方針や特色はあります。
しかし基本的には、高校入試や大学入試といったゴールがあります。
そのため、学校や塾では、
何を教えるのか
どこまでできるようにするのか
どの順番で学ばせるのか
ということを、比較的組み立てやすいわけです。
もちろん、学校教育や塾教育にも難しさはあります。
ただ少なくとも、「何を教えるべきか」という大枠は、すでに社会的に共有されています。
IT教育は「何を教えるべきか」から考えなければならない
一方で、子ども向けのIT教育は違います。
特にアイアルクは、フランチャイズのカリキュラムにそのまま乗っている教室ではありません。
ですから、何を教えるのか、どのような活動をするのか、子どもたちに何を身につけてほしいのかを、自分たちで考えなければなりません。
ここは、私がアイアルクを運営してきた中で、非常に心を砕いてきたところです。
アイアルクとしての方向性は、ある程度はっきりしています。
それは、ものづくりを通して、子どもたちの創造性や自主性を育てるということです。
プログラミングは、そのものづくりの中にある一つの要素です。
プログラミングそのものを目的にするというより、子どもたちが自分で考え、試し、作り、工夫するための手段の一つとして位置づけています。
教材の選択肢が多いからこそ難しい
IT教育の難しさの一つは、何を教材として与えるのかの選択肢が非常に多いことです。
たとえば、子ども向けのIT教育には、さまざまな形があります。
マインクラフトを使う教室もあります。
レゴのようなブロック教材を使う教室もあります。
ロボットを使う教室もあります。
ゲーム制作を中心にする教室もあります。
プログラミング言語を学ぶ教室もあります。
どれも活動としては魅力があります。
しかし大事なのは、
その教材を使って、子どもにどのような力を育てたいのか
ということです。
マイクラをやること自体が悪いわけではありません。
ロボット教材を使うことも、ブロック教材を使うことも、それぞれ意味があります。
ただし、それをやることで子どもたちにどんな力がつくのか。
その活動の裏側に、どのような教育観があるのか。
そこに説得力を持たせることが、IT教育ではとても難しいのです。
保護者の方に見ていただきたいポイント
保護者の方がIT教育を習い事として選ぶとき、表に見える活動内容はもちろん大事です。
「マイクラができる」
「ロボットを動かせる」
「ゲームを作れる」
「プログラミングを学べる」
こうした内容は、教室選びの大きな判断材料になると思います。
ただ、それだけでは少し見えにくい部分もあります。
ぜひ見ていただきたいのは、
その活動を通して、子どもをどう育てようとしている教室なのか
という点です。
何をやっているかだけでなく、なぜそれをやっているのか。
その活動を通して、子どもにどんな経験を積ませたいのか。
どんな力を伸ばそうとしているのか。
そこを見ると、IT教育という習い事は、少し選びやすくなるのではないかと思います。
教育の難しさには二つの軸がある
ここで、もう少し教育全体の話をします。
教育の難しさには、大きく二つの軸があると思っています。
一つ目は、教える相手の成熟度です。
大人に教えるのと、幼児や小学生に教えるのでは、まったく難しさが違います。
大人であれば、少し難しい言葉を使っても意味をくみ取ってくれます。
自分の行動を律することもできます。
わからないところを質問することもできます。
しかし、幼い子どもはそうはいきません。
言葉が十分に伝わらないこともあります。
集中が続かないこともあります。
感情や行動を自分でうまく制御できないこともあります。
つまり、年齢が低い子どもに教えるほど、教育の難しさは上がっていきます。
もう一つの軸は、教える内容そのものの難しさです。
算数でいえば、足し算より掛け算、掛け算より割り算の方が難しくなります。
同じように、プログラミングやITの内容は、かなり抽象度の高いものです。
コンピューターの仕組み、命令、順番、条件、繰り返し、変数、通信、制御。
こうした概念は、大人にとっても簡単とは言えません。

幼児・小学生向けIT教育は、実は非常に高度な教育である
この二つの軸を重ねて考えると、幼児や小学生にITを教えることの難しさが見えてきます。
つまり、
まだ発達の途中にある子どもに、抽象度の高いITやプログラミングを教える
ということになるからです。
これは、かなり難しい教育活動です。
たとえば、同じプログラミングの内容を教えるとしても、大学生に教える場合と幼稚園児に教える場合では、使える言葉がまったく違います。
大学生なら、数学的な言葉も使えます。
英語由来の概念も説明できます。
抽象的な話もある程度伝わります。
しかし、幼児や小学生には、そのままでは伝わりません。
言葉を厳選する必要があります。
身体を使って伝える必要があります。
表情や声の調子で興味を引きつける必要があります。
そもそも活動を継続できるように、場を整える必要があります。
だから、子ども向けIT教育は「子ども向けだから簡単」なのではありません。
むしろ、
難しい内容を、まだ発達途中の子どもに届けるという意味で、非常に高度な教育
なのです。
プログラミング教室が増える中で感じること
今、子ども向けのプログラミング教室は各地に増えています。
その中には、空き教室や空き店舗を活用したフランチャイズ型の教室も多くあります。
そうした教室が悪いと言いたいわけではありません。
さまざまな形で子どもたちがITに触れる機会が増えること自体は、意味のあることだと思います。
ただ、気になることもあります。
その空間は、本当に子どもたちがITを学ぶために設計されているのか。
教えている先生は、プログラムについて十分に理解しているのか。
あるいは、教育について深く考えているのか。
もちろん、専門家だから必ず良い教育ができるわけではありません。
子どもとの関係づくりがうまい人もいます。
その活動に対して深い経験を持っている人もいます。
野球の監督やスポーツ指導者のように、教育学の専門家ではなくても、優れた指導をする人はたくさんいます。
ですから、資格や肩書きだけで判断することはできません。
ただ大切なのは、
自分たちは、まだ確立しきっていない新しい教育分野に挑戦しているのだ
という自覚を持てるかどうかだと思います。
「空き教室の活用」ではなく「新しい教育分野の開拓」として
プログラミング教室を、単に空き教室を活用するためのビジネスとして考えることもできるかもしれません。
しかし、私はそれだけではもったいないと思っています。
子ども向けIT教育は、まだまだ未開拓の分野です。
何を教えるべきか。
どう教えるべきか。
どの年齢に、どの活動を、どの順番で届けるべきか。
考えなければならないことは、たくさんあります。
だからこそ、この分野に関わる人たちには、
新しい教育分野を開拓しているのだ
という気持ちを持って取り組んでもらえたらと思っています。
その意識があるかどうかで、日々の活動の意味は大きく変わるはずです。
IT教育に関わる人たちとつながりたい
私は、IT教育やロボット教育に真剣に取り組んできた方々とも、もっと交流していきたいと思っています。
新潟県内にも、そうした活動をされている方がいることは把握しています。
まだ直接お会いできていない方もいますが、いつかお話ししてみたいと思っています。
今回のブログには、そうした方々に向けて、こちらから手を上げるような意味も込めています。
子ども向けIT教育は、簡単な分野ではありません。
だからこそ、真剣に考えている人同士で、もっと議論し、学び合い、良い実践を積み重ねていく必要があると思っています。
おわりに
今回は、子ども向けIT教育の難しさについて整理してみました。
IT教育は、ただパソコンやプログラミングを教えればよいものではありません。
何を教えるのか。
その活動で何を育てるのか。
発達途中の子どもに、抽象的な内容をどう届けるのか。
そして、その教育をどのような思想や方針で組み立てるのか。
そこまで考えて、ようやく子ども向けIT教育は形になっていくのだと思います。
この難しさに共感してくださる教育関係者の方。
IT教育を習い事として検討している保護者の方。
あるいは、この記事を読んで「そういう難しさがあったのか」と感じてくださった方。
ぜひ、ご意見やコメントをいただければ嬉しいです。


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